白狐あやかし絵巻

4/10
前へ
/10ページ
次へ
たくさんの村人たちが、あたしと、円御前の動きに注目している。 どうしよう、なんだか怖い……! あたしは彼女の大きな瞳から目をそらすことができなかった。 にぎやかな太鼓、たのしげな笛の音。 今宵は、漆黒の巫女が成人することを祝う 土蜘蛛の里の、宴。 祭の絢爛と騒音のなかで、闇を孕んだ椿が あたしの眼前に立ち、スウッと膝をつく。 「今宵、この宴の日をどんなに待ったことか」 うしろ手に縛られた縄が村人により、ほどかれる。 彼女はあたしの顎を、指先でクイと持ちあげた。 「待ち焦がれたわ、白狐」 「くっ……」 「おまえは大切な贄。漆黒の巫女、黒百合姫 さまが成人するための捧げもの」 「うう……」 「あはははははははははは。哀れなものね? 双児でありながら。おなじ顔を持ちながら、 片割れは神となり。片割れは、贄となる」 「ぐっ……!」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加