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「この時をどんなに夢みたことでしょう。
お前にはわかろう筈もないがな。あはははは
はははははははははは」
円御前は、きらい。
貴方のために、生け贄になるんじゃない!
ねえさまと、晴明さま。そして式神のみんなが笑ってくれたらいいの。
ただそれだけの想いで、あたしはここに来たんだから…!
そう思ったらもう止められなくて、顎にそえられた指を
反射的に噛んでしまった。
「痛ッ!」
ハッと我にかえり後ずさる。
すると、そばで待機していた村人たちがあたし目がけて一斉にとびかかってきた。
「粋な真似を……!」
助けてくれる人など、誰もいなかった。
土の味がする唇を噛みしめながら、うす目をひらくと
助けようと手を伸ばした姉さまの姿がみえた。
だいじょうぶ……よ……姉さま。
姉さまの艶やかな漆黒の髪が、風にたなびく。あたしの髪は、真っ白で。
本当にさ、どうしてこんなに違うのだろう
おなじ母さまから生まれてきたのに。
瞳もね、姉さまは人とおなじ、黒曜石の色をしているのに。
あたしの目なんて深紅だよ?
人がおびえるのもさ、仕方がなかったよね。
髪も瞳も舌も。どうして双児なのに、こんなにも違うのかな……?
この舌がうまく動いたのなら、今この刹那最期になんて告げようか。
彼女に向かい、震えながら手を伸ばした時
互いの指が、互いをもとめた刹那。
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