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円御前がザッとあらわれて、黒百合姫の体を止めた。
「いけません!漆黒の巫女!」
「なにをする!彼女はあたしの……!」
「あれは生け贄。貴方とは関係ない」
「はなして!ずっと助けたかったの。たった
一人の妹よ。ほら、顔なんてよく似て……!」
「黙りなさい!黒百合姫!」
円御前の透る声に、あたりがシン……と静まりかえる。
そのまま視線で村人に『連れていけ』と命じると、
二人組の屈強な村人たちに引きずられるようにして、
姉さまは連れ去られていってしまった。
「あ……」
絶望の淵で、あたしの指だけが虚空に残される。
「さて、それでは宴をはじめましょうか?」
円御前が一瞥をくれると、群衆に向きなおり片手をあげて指揮をとった。
「死という名の宴を、彼女にーー」
その声をうけて、ウオオオオオーー!と
大地を揺るがすような歓声が、神社に響いた。
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