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「……何をしているの?」
それが私に向けられた問いだと、最初は気付かなかった。
春の薄ぼんやりした夕暮れ。
ほんのり陽だまりのにおいを残した空気。
家路を急ぐ人々の間にポツンと取り残された彼は、私のことを不思議そうに見つめていた。
「ねぇ、何をしているの?」
繰り返された問い。
それを受けてようやく、私は質問を受けているのだと気付いた。
……私は、何をしているんだろう?
改めて、自分の今の状況を考えてみる。
場所は、道路から少し奥まった植樹帯のガードレール。
それに腰かけて、お行儀悪く上げた片膝を抱えてうつむいて。
「……歌ってる、のかな?」
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