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そのひとつ前の日記も読む。
【7月○日
夏休みに入って初めてのデート。河川敷のベンチまでふたりで歩いていたら、急に雨が降ってきた。桐哉に手を引かれて走ってベンチの屋根の下まで行ったら、その途端に雨がやんで、なんだったんだ、って笑った。夏期講習で忙しいけど、最低週に1回は会おうと約束した。】
「………………」
よく見ると、ページがおかしかった。私は夏休みに入ってからすでに4ページ分くらい書いていたはずなのに、1ページ分しかない。
そこで初めて一回日記を閉じ、さかさまにした後で反対側から開いてみた。すると、正真正銘、書き覚えのある私の日記が綴られていた。
装丁が表紙も裏表紙も全く同じなので、間違えて一番後ろのページを開いてしまっていたことに気付かなかったのだ。
「……え?」
網戸に飛んできた虫がぶつかった音がして、「ひゃっ」と小さな悲鳴を上げる。
私は、なんとなく足を忍ばせてカーテンだけを閉め、またおそるおそる机に戻った。そして、タオルで髪をひと拭きし、深呼吸をした後で、もう一度最後のページを開いてみる。
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