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メンデルより、登山列車で四時間。
そこからさらに山道を外れ、獣道を闊歩すること三時間。
その遺跡はあった。
かつてはゲイル遺跡と呼ばれていたその遺跡。
今では立ち寄る巡礼者も登山者も無く、メンデルの町人の中でも、その正式名は朧気にしか記憶されていない。
かろうじて形を残している石垣の門や、かつては御子が歌い踊っていたのか。
広場の風化した祭壇。
傾いた何本もの堀立柱。
何を象ったのか、頭部が破損し分からないが、恐らくこの世界で崇められている女神ヒルダの石像。
それ等の風光に哀愁を感じながらユズは……。
「ズズーーッ」
カップラッメーン(濃旨!! アハド匠監修絶品ヒドラのテール味!!)をすすっていた。
「いっやああああぁぁぁ!!!!」
可愛い可愛い彼女(ユズ自称)の、それはもう可愛らしい小動物のような絶叫をBGMにしながら。
「ま、待って待って待って!!!! こっち来なっ……ひぃやあぁぁ!!!!」
「エミリー、もう3分経つで。早ぅ倒さんと麺伸びるでー」
ゲイル遺跡に、誰も寄り付かなくなってしまった原因。
立地の関係もあるが、近付きたくとも近付けないのだ。
何故ならゲイル遺跡はもはや人の侵入を拒む、魔物スカラーウルフの住処となっていたからだ。
町人もゲイル遺跡よりスカラーウルフの住処と言った方が、しっくり来る者の方が多いらしい。
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