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依頼
2016年3月11日
「今年で5年か、震災は大変だったよな?」
玩具を段ボールに積めながら宮部は言った。
何だ?このデブ、くせーし消えろよ。
「そうですか?」
東日本大震災か、迷惑な話だ。経済的な理由で仕事は切られるし、ガタガタなのはこっちも同じなんだよ!
「葛城はどうしてそう冷たいんだ~?俺の友達なんて亘理町で死んだんだぞ?」
「先輩の故郷は滋賀でしょ?」
このデブは偽装被災者だ。宮部は人材派遣会社【バイキング】の主任だ。
「ったくよ~、ひっかかれよ」
汗だくなりになり仕事を終え、チャリで久喜駅に向かった。
寒い風がロータリーを吹き抜ける。
「あ~サブ~」
チャリをコンビニの前に停める。駅ビル【cookie】の地下にある【サイゼリア】に入る。同じ階に、カラオケボックスやホルモン屋がある。
バイキングに入ったのは5年前だが、なかなか正社員にはしてもらえない。
ガキどもがガヤガヤしている。賑やかでいいな。
俺にもあんな時代があったな。
キラキラ眩しく輝く時代が。
煙草の匂いにイライラする。俺はスグキレる世代だ。1982年、ホテルニュージャパン事件があった年に生まれた。
俺が15歳のときに神戸で、サカキバラ事件が発生した。バブルが崩壊して、そのツケをジュリアナなんて知らない俺が払わないとイケナイなんて!
キレてもいないなのに『キレてんじゃないよ!』と、先生や先輩によく言われたもんだ。
サイゼリアに入り、マグナムの白を頼んだ。
「マグナム(*´-`)」と、舘ひろしを気取ったがカワユイ店員さんにスルーされた。
あぁ、そうかい!?俺の存在なんてそんなもんかい?そういや、【存在】なんて歌があったな。
尾崎豊って知ってるかい?【15の夜】、【卒業】とかが有名だが、【存在】もいい曲だよ。
マグナム飲んでるからオシエ※?★ラレナイけどね、テクノ調でゲーセンの中を彷彿とさせるメロディーだ。
マグナムって意外と大きいんだな。俺の×××より大きいんだぞ!デカンタの方が俺の肝臓にはフィットする。
柴田恭兵を小さくした中年が近づいてきた。
「仕事ははかどってるかな?カツレツ君」
彼は黒羽秀樹、【黒羽探偵事務所】の所長だ。
「君の仕事は誤字脱字の添削だ」
「今、何時?」
「5時」
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