王様と俺の出会い

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農業大国フランテスカ王国。大陸の西部に位置する。此処は四季がはっきりしており季節に応じて様々な物が収穫できる国として有名である。その外れの至って平和な農村アイリスにはとある伝統がある。 "豊作の年には小麦と米を、不作の年には女を毎年蛇の王に捧げよ。さもなくば、次の年に厄災が降るだろう" 何十年も豊作であったアイリスの民は深刻な面持ちで会議を開いた。何故ならば、年頃の乙女がこの村にはいないからである。隣の商業国に出稼ぎにいってしまったからだ。仕方なく、村の人々はある作戦に躍り出た。 _____☆_____ ミルキーベージュの豊かな髪を纏めた愛らしいウエディングドレスの女が薄暗い森の中を歩く。顔や全身はヴェールに覆われて全ては確認できないものの揺れる隙間から見える肌は白かった。 昼のはずなのに夜のような不気味な道を暫く歩くと古びた洋館が見える。カラスが彼女を歓迎するように鳴いているが無視して玄関であろう大きなドアの前に立った。 重たそうな扉が自動で開くと荘厳なホールがある。奥の階段には何かがいた…。下半身は大蛇のようだが上半身は貴族特有の華美な刺繍のコートを纏った…整った顔の男が。 「ようこそ、花嫁」 女性が見れば見惚るような微笑みでズルズルと引き摺りながら近づいてくる。 結婚式の新郎新婦の誓いの儀式程の距離まで近づくと何かに気づいたのかピタリと這いずる下半身を止めて蛇男は顔を心底醜いモノを見るように歪めた。そして片手を挙げると親指と人差し指で交代を示して… 「チェンジだ、バーカ。野郎を呼んだ記憶はない」 「俺だってやりたくねーけど、仕方ねーだろ!バーカ!」 ヴェールの奥から聴こえる声は変声期初めの低さで、覆うものを髪ごと取り去ると女のような顔立ちであるが耳には掛からず刈り上げない程度の髪の長さである。よくよく見ると肩も骨ばって筋肉質なのが見てとれる。 村人達の考え…それは、 生け贄を男にすることであった。
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