人魚の歌姫

人魚の肉は不老不死になる力があると信じられており、人間に見つかると、殺されてしまう可能性もあるのです。

確かに人魚姫がいなくては困りますが、自分の身もかわいいものです。
結果的に、人魚姫を助けることができる人はいませんでした。

(私はもう動くことはできないでしょう。人間の暮らす地域に打ち上げられたのなら、もう覚悟を決めなければなりませんね)

打ち付けられた痛みで、意識を手放せない人魚姫は、保ち続ける意識の中でそう思うことしかできません。

海岸から海へと帰ろうとするものの、力が入らず、動くことはできません。

人魚の身体は、泳ぐことには適しているけれど、陸を動くことには向いていないのです。
それに加えて、人魚姫は満身創痍、動けるはずはなかった。

今はまだこの辺りはとても暗いけれど、夜が明けてしまえば、誰かの目には留まることは明白で。
その場合、捕まるか、殺されるか、いずれか一つしか選択肢はないだろうと、人魚姫はそう考えたのだった。