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傷つきながらも、助けを受けたことで、人魚姫は仲間の元へと帰ることができた。
しかし、癒しの歌は、自分には何の効果もなく。
ただ、他の人魚のため、海が穏やかであることを祈り、歌う日々が続いていた。
しかし、時折思い出す、助けてくれた美しい青年。
人魚姫は、恋をしていた。
時折、歌う声の中に、人魚だけではなく、青年を思いながら歌うことがあり、海だけでなく、地上もまた穏やかな気候に恵まれてゆく。
それは世界にとっては望ましいことであっても、人魚たちにとっては望ましくはなかった。
老齢の人魚たちは、それを辞めるように注意をすれば、人魚姫は素直に分かっていると返事をするのだが。
しばらく時間が経つと、また助けてくれた青年のために歌を歌い始めるのだ。
だからといって、人魚姫が海の生き物を慈しんでいないわけではなく。
あくまでも、海の生き物を慈しみ、海を穏やかに保ちながら、ほんの少し、遠く離れた場所に暮らすあの人を思ってのことだったのだが。
老齢の人魚ほど、それを受け入れることはできない。
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