第19話 パステルカラー

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哲は鼻で笑い、それから傍に立った姫良を見上げた。 「姫良、またな」 「うん。いってらっしゃい!」 窓から出した手を上げ、哲はまっすぐまえを向いて車を出した。 姫良と紘斗は車を追うように駐車場から出ると、まったく視界から消えるまで見送った。 そうしながらふと何かが気にかかる。 いまみたいにだれかを見送ったことのあるような、もしくは自分が見送られる側だったのか。 さみしさがよけいに増してきて―― 「哲ちゃん、一回も振り返らなかった」 文句たらたらで云い、心細さを振り払った。 紘斗は姫良の背中に手を当てて歩くように促した。 振り仰ぐとかすかにその口もとが笑っている。 「桜、見にいく」 紘斗はまるっきり話を変えて強引に誘い、姫良は目を丸くした。
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