第19話 パステルカラー

12/22
106人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「仕事は?」 「電話あってからハイスピードで仕上げた」 「哲ちゃんのおかげでデートできる!」 うれしさ満面の姫良とは対照的に、紘斗はちょっとだけ眉をひそめる。 「おれの実力だ」 いつにない自己主張が紘斗の口から飛びだす。 「……そうだろうけど?」 どうしたんだろうと見つめていると、紘斗はつと目を逸らし、ため息を吐いて何かを振り払うように首を横に振った。 「まえ向いて歩かないと転ぶぞ」 まるで子供に対する注意だ。 何をどう思ったのか知らないけれど、さっきの紘斗の云い方のほうがよっぽど子供っぽいのに。 ほんの少し眉間にしわを寄せて抗議を示したあと、姫良は云われたとおりに正面に向き直った。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!