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公園に入ると、去年と同じく、姫良のなかに既視感みたいな何かが渦巻く。
なんだろう。
心細さと安堵という相対した自分の気持ちに押され、半歩さきを行く紘斗の手に触れた。
姫良の手を握りながら紘斗の目が向く。
その表情が可笑しそうに緩んだ。
一年まえ、紘斗がずっとずっとやさしくて穏やかだったのは、姫良が祖母の死で投げやりに沈んでいたからだろうと思っていたけれど、いま、そのせいばかりじゃないとわかった。
この場所では紘斗の雰囲気が微妙に変化する。
いつも――自分の家にいてもどこか気を張っているみたいなところがあるのに、ここでは何を云っても怒りそうにないくらいリラックスして見える。
そんな紘斗の様子に、姫良の心細さも浄化されていくような気がした。
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