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公園のなかは日差しを受けて、芝生の緑が自ら光を出しているかのように鮮やかに発色している。
親子だとか子供たち同士だとか、楽しそうな声が公園中を心地よく通り渡る。
そのなかで、たぶん定位置なのか、紘斗は止まることなく桜の木に挟まれた池を目指した。
池の周りに咲いた雑草みたいな花たちが、景色をカラフルに彩っている。
手を繋いだまま、姫良は池の縁にしゃがみこんだ。
「紘斗、これ、去年ホワイトデーにもらった花――雪割草だよね。一年まえに来たときも咲いてた」
紫色の花を指差しながら紘斗を見上げると、逆光になっていてよく表情が見えない。
「ああ。……なんで笑う?」
小さく吹きだした姫良に、呆れているような声が降りかかった。
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