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「紘斗、ここがホントに好きなんだなって思って」
紘斗が肩を少し動かしたのがわかった。
座って見上げているのも疲れてきて、また花に目を戻した。
「雪割草、わたしみたいって。だから、紘斗のお気に入りの場所にわたしはずっといたのかなって……ちょっと……ううん、すごくうれしくなった」
からかうか、もしくは鼻で笑ったりするかと思ったのに紘斗は黙っていて、そのかわりに姫良の手を一瞬強く包みこんで、それから離れた。
「桜きれいだけど、見るのにはちょっと早かったね」
「また来ればいい」
「うん。……一年、なんだ」
まだ咲きはじめといった桜を見上げながら、姫良はゆっくり立ちあがった。
紘斗はすぐ傍にある白いベンチに腰をおろす。
「どうした」
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