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「桜の季節って嫌いだった。やさしそうにしてるくせにお別ればっかり押しつけられてるってイメージがあるから。今年も、やっぱり春は哲ちゃんを連れていった」
「姫良、不安か?」
紘斗は去年と同じセリフを口にした。
「そうでも、去年とは全然違うの。同じ自分なのにどこか違ってる。
桜って、一年ていう時間がちゃんと自分のなかに在るんだってこと、教えてくれるんだね。
一年まえ、紘斗が強引に連れてきてくれなかったら気づけなかったかもしれない。
おばあちゃんが死んでしまってすぐは、紘斗がいるから大丈夫って思った。
でも、紘斗がいるから何? って思うようになって……」
紘斗の手が姫良の手をつかんだ。
桜から紘斗に目を移す。
今度は姫良のほうが見下ろす立場だ。
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