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「これでも、せめて“九月”まで戻そうってがんばってる。哲ちゃんも家族じゃないのにあったかい。またね、って云ったし、来年この桜を見られる頃には近くにいるんだよね。哲ちゃん、もう東京出ちゃったかな」
姫良が云い終える頃、笑っていたはずの紘斗があからさまにため息をついた。
「どうかした?」
紘斗は答えることなく首を横に振り、それから奇妙に沈黙してしまう。
話す気分じゃなさそうだ。
不思議に思いつつも、紘斗がお喋りじゃないことは百も承知で、姫良は砂場にいる子供たちを眺めた。
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