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―――人間がなぜ恐怖を覚えるのか、俺は知っている。
「知らない」からだ。
得体の知れぬものに恐怖し、得体の知れぬものがあるのかも分からない暗闇に恐怖する。
だから未確認生物にライオンとかサメとかの名称を与え、既知の存在にしようとするのだ。
よって今の俺は、恐れるものなど何もない。
肝試しとかいうくだらないアクティビティに付き合わされ、墓地付きの廃寺にいる。
なんなら俺の目の前には人魂なんてものも浮いているが、逆に恐れる理由がない。
墓地の人骨に含まれるリンが揮発、それが空中で発火したものが、俗にいう人魂というやつだ。
珍しいこともあるものだ。
俺は中に浮かぶ火の玉の横を通り過ぎた。
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