独房のカーテン

2/7
前へ
/8ページ
次へ
―――人間がなぜ恐怖を覚えるのか、俺は知っている。 「知らない」からだ。 得体の知れぬものに恐怖し、得体の知れぬものがあるのかも分からない暗闇に恐怖する。 だから未確認生物にライオンとかサメとかの名称を与え、既知の存在にしようとするのだ。 よって今の俺は、恐れるものなど何もない。 肝試しとかいうくだらないアクティビティに付き合わされ、墓地付きの廃寺にいる。 なんなら俺の目の前には人魂なんてものも浮いているが、逆に恐れる理由がない。 墓地の人骨に含まれるリンが揮発、それが空中で発火したものが、俗にいう人魂というやつだ。 珍しいこともあるものだ。 俺は中に浮かぶ火の玉の横を通り過ぎた。  
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加