独房のカーテン

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俺の足を止めたのは、二度目の人魂。 二度目。 そうだ、今日は空気も乾燥しているから、発火も起こりやすいのだろう。 だが。 視界に入る、さらに別の人魂。 増えた。 元からあったのではなく、現れた。 そして、また。 増える。 増える。 増える、増える、増える。 墓地に次々と浮かび上がる、火。 不思議な感覚だった。 人は暗闇に恐怖するというのが定説だというのに。 暗闇を照らすその明かり自体が、俺の思考を乱している。 なぜだ、なぜ増える。 物珍しい事前現象がなぜ多発する! しかも、同時に。 同時に、視界を覆うくらいに!! だって、こんなの……。 説明が、つかないじゃないか。 走った。 俺は駆け込んだのだ。 というか、逃げた。 明るみから、暗闇へと逃げ込んだ。 寺の中へ。 暗闇に包まれる。 暗闇に安心感を覚える人間なんて、この世できっと俺くらいだ。  
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