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◇
サルディニア王国は治安が良い。これは永らく君臨している、トリュッケン王が有能な証だ。
国が富んでいたら、道を踏み外す者も少なくなる。
「フラは最後にどこを目指しているの?」
水色の外套から、チラチラと白い短衣が見え隠れする。アリスは赤い上着に白のミニスカート、胸の膨らみがやけに盛大だ。
一方で背の高さも、膨らみも二周りは控えめなフラ。
「未だ志し半ばにして道遠く、至は蕀の人生よ」
「そっか、決まってないんだ」
「うん」
病んだ答えを軽々とスルー、到達地点など追々決めていけばそれで構わない。
「アリスは?」
「私はね、師匠だけなんだ。いつか一緒に笑えたらいいなって」
踏み込んではいけない過去がある。触れてはいけない理由がある。
少しだけ先を見るような瞳、度々出てくる師匠に興味を抱く。
「大切な人なのね、師匠って」
「ええ、私の母親であり、友人であり、師匠なの」
幼いときから常に一緒だった、最愛の人。
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