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「でも本当の母親じゃないの。私って森の中で迷子になっていたみたいなの、そのまま師匠に育てられて」
産みの親より育ての親よ、アリスが断言した。
「わかるー!」
突然の大声にちょっと驚く、フラが大きく頷いている。
「あたしも実の父親は全然話したこともないのよ。それで小さなころからずっとブラッド――えっと、師匠に育てられたのよ」
意外な共通点を見つけて興奮している、珍しいとまでは言わないが、二人が同じというのは稀だろう。
「そうなんだ! それで何の師匠だったのかしら?」
「えーと、何でも色々教えてくれたわ。行儀作法や勉強、体を動かすのも全部。ほんと、色々よ……」
懐かしい、と昔を思い出しているフラの表情は穏やかだ。それを見てアリスも同じ気持ちになる。
「帰ったら一杯お話ししなきゃって思ってるのよね」
「アリスは是非そうしてあげて」
少しだけ困ったような色が浮かび、すぐに見えなくなる。その意味を推察する。
「もしかしてフラの師匠って」
「そう、元々お爺ちゃんって位だったから、もう、ね」
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