魔術試験とアリスの憂鬱

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◇  受付で介添人を申請すると、十字架を見てあっさりと承認された。この手のことがらは否定するよりも黙って受け入れるに限る。 「試験はこの指定日で、用意するものはこっちの一覧にあるから」  事務処理が滞りなく行われた。数日の猶予があるのは人によりそれぞれ感じ方が違う。 「宿泊費、また増えちゃうみたい。フラ、大丈夫?」 「早速制度があるわね、けどあたしはそれを避けて通るわ。こんなことで舞台を乱されたくないの」  一緒に渡された書類、一枚だけ色が違った。発行元が南派、滞在費の免除と引き替えに所属を確約するといった内容が書かれている。 「私別にどこ所属でもいいから、費用出してもらうのでも……」  軽い負担ではない、二人分で数日長引き、この先もまた延びないわけでもない。 「あたしは必要と思う措置をとるわ。こんな紙切れで未来を狭めたらダメよ」  破って捨てるのも失礼なので、折り畳んで懐にしまう。これが助けになる人物が居る、批判するようなこととは思っては居ない。
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