魔術試験とアリスの憂鬱

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◇ 「野原ね」  小高い丘があり、背が低い草木がうっすらと生えている。養分が少ない土質に加え、やや粘土混じり。 「これじゃ植物も成長しないわね」  森で育ったアリスだ、良し悪しを見抜くのはお手のもの。 「だからこその会場になってるわけね。ここならどうなっても痛くも痒くもないわ」  焦げても延焼しないし、岩が飛んできても虚しく転がるだけ。 「ところで」 「ん?」 「アリスはどんな魔法を使えるの?」  記憶を遡っても魔法を使っている姿を見たことがない。未知数もよいところだ。 「一般的な元素魔法だけど」  元素魔法。現象を体現させる構成がそれにあたる。火をおこしたり、風を吹かせたりだ。 「ふーん。なんかトリッキーなの出来ないの?」 「変な期待は止めて。師匠が基礎だけで充分だって」  経験を積み、構成を理解してのちに、自らの足で先に進む。師匠とやらの考えはもっともなことだ。 「そう。あれは何かしら?」  平野で怪しげな声をあげている。多分試験を受ける人物だろう、勝手に解釈しておく。
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