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あちこちに目印をつけては移動を繰り返す。もしかしたら設営の準備なのかも、とアリスは好意的にとらえる。
「すいませーん、どうかしましたか?」
困っているなら手助けしてあげたい、あまりに善良な発想。
「ストーップ! そこ、魔力スポットあるから!」
頭からすっぽりと被るタイプのローブ、色は黒。闇夜に歩いていたら、馬車にはねられてしまうかも。
「試験会場の準備ですか?」
「そうだ、だから邪魔しないでくれたまえ」
とりつく島もない。人が必要なら街に幾らでもいる、邪魔というのも事実だろう。
「無地……」
「うっ」
フラがぼそっと呟いた。黒フードが動揺を見せる。
「ん、無地って何かしら?」
意味がわからないアリスが、二人を交互に見た。
「無地でシンプルなローブは黒が映えるなぁって。あたし黒って好きよ」
好きなわりには身に付けていない。行きましょう、邪魔になるから。
他にも言いたげなアリスを無視して、フラは行ってしまう。
「あ、待ってよ。お仕事頑張って下さいね!」
ぺこりとお辞儀して、小走りで追い掛ける。
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