魔術試験とアリスの憂鬱

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 宿に帰る前に必要な物を買い揃えていく。さしてあるわけではないが、無いと当日困ったことになる細々したもの。 「ね、フラってどこ出身なのかな?」  部屋で体操しながら尋ねる。今の今までそんな話にならなかった。 「遠い国よ。船で一か月くらいの島国なの」  世界は広い、それなのに聖マリーベル教はどこにでもある。 「そっかぁ、凄いよね一人で」 「別に、これといった目的があるわけでもないし。アリスの方がよっぽど凄いわよ」  大切な人の為に何かしたい、そういう気持ちがね。ほほ笑んで認める。 「え、改めてそう言われると照れるな。私ね、師匠を信じてるんだ、いつかきっと笑ってくれるって」  強い想いがあるのが解る。夢がある者は輝いて見える、それが何であれ。 「そんなアリスを優しく包んでくれる彼は居ないのかなぁ?」 「そ、それは居ないかも。私って魅力ないのよね」 「ほほーう、どの面さげて言うかな。この、このっ!」  後ろから抱き着いて大きな胸を揉みしだく。そして妙に悲しくなり、フラは部屋の片隅で小さくなってしまった。
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