破滅の魔女は、二度失う

5/7
前へ
/79ページ
次へ
 長い睫毛を伏せがちに、彼女は首を横に振る。大好きだからこそ、不幸にはしたくない。 「俺はリリスと一緒に居られたら、それが幸せだと思ってる。だから今だってとても幸せだよ」 「その……わた――」 「破滅の魔女だ!」  リリスティアが承諾を口にしようとした時、街の警備が声をあげた。魔法使いが大勢やって来て二人を囲む。 「そこに居るのは伝承にある破滅の魔女だ。君、すぐに離れて!」  隊長らしき中年男性がアルトに避難を呼び掛ける。リリスティアは悲しげな表情になり、うつむく。 「彼女は破滅の魔女なんかじゃない! 俺の妻でリリスティアだ!」 「ダメだ、魔女に虜にされている!」  魔法使いが詠唱を始めた、市民が遠ざけられ、障壁を構成して行く。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

155人が本棚に入れています
本棚に追加