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「仕方ない? アルトの死が仕方ないだと?」
二人を中心に風が巻き起こる。特に何かを詠唱したわけでもないのに、突風が吹き荒れた。
「いかん、魔法だ! 早く殺せ!」
完成した構成が放たれる。炎が、電撃が、石のつぶてが。それらは全てリリスティアにたどり着く前に雲散霧消した。
「そうか、そうだな。アルトが居なくなってしまったこんな街は不要だ。仕方ない、消してしまおう」
肩を落とし涙を流しながら、彼女は複数の詠唱を重ねる。
中断させようと警備兵が打ちかかろうとするが、突風のせいで近付けない。その場に立ってすらいられなくなる。
「まずい、詠唱を邪魔するんだ!」
多くが何とか対抗しようとした、全てが虚しく効果を発揮しない。
「さようならアルト、心配は要らない、貴方との想い出だけは残る」
その日、そこに存在していたはずの街が跡形もなく消え去った。破滅の魔女と共に。
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