第1章:はじまり

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次の日 試合前 監督の周りに集まり、僕達はスターティングメンバーの発表を待つ。 やはり自分たちが最上級生になってはじめての試合ということもあり、今まで試合に出れなかった人たちからすれば緊張の時である。 しかし僕はなにも緊張はない。 僕は打てないことを自分で自覚してる。 守備と足には自信はあるが、それでもそんなに飛び抜けてるとは思わないし、それだけだ。 「では発表するぞ」 監督はポケットから取り出した紙を見ながら、周りの顔を見渡す。 「一番、ショート松田」 「はい!!」 松田。先輩の試合にもたまに出ていたやつだ。チームで一番足が速く、バッティングもいい。守備もエラーをしているところはそんなに見ない。 「二番、センター斎藤」 斎藤。この苗字は野球部には一人しかいない。彼は全く打てないが守備と足に自信がある…… 「え!?」 「淳お前だ!返事をしろ」 「は、はひぃ」 「淳なんだその返事は!」 「ブハハ!お前緊張しすぎ」 「大丈夫かよ!?」 僕が間抜けな返事をしたことで緊張感に包まれていた野球部の空気が一気に緩んで笑いが起きる。 しかし僕にとってはそれどころではない。 人生初の試合。 人生初のスタメン。 一体どうすればいいんだ。 僕は絡まる頭の思考を1つ1つ解いていく。 そして昨日のイッタの言葉を思い出した。 仕返し。 これかよ!? 僕はイッタの方を見る。イッタは黙々と投球練習を行っていて、全く気付いていない。 あいつ。監督になにか言ったな。 いや今さら悩んでも、恨んでも仕方ない。 僕は一応家から持ってきたバットを振ってみる。 うん。いつも通り鈍いスイングだ。 そして何度かスイングした後、ついに試合が始まった。
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