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「イッタ君ありがとねー」
「イッタ君、ウチはいつでも君を歓迎するからな」
「今度は私とも遊んでほしいなぁ!」
結局僕の初出場を祝う会は最終的にイッタの大活躍を祝う会に変わり、幕を閉じた。
「ちょっと送ってくる」
僕は玄関から出ると、うるさい三人から切り離すためにすぐに扉を閉める。
そしてイッタと二人で歩き出した。
「そんな妬くなって」
「妬いてねぇよ」
僕はすぐに返す。実際野球に関してはイッタに対して妬くなんてことは一切ない。
誘ってくれたのも教えてくれたのも全てイッタで、実際チームの誰よりも、いやもしかしたら県で一番うまいかもしれないこいつを僕は尊敬している。
野球に関してだけだけどな。
「出たぐらいで満足してもらっちゃ困るんだよ、俺は」
イッタは突然真剣な顔になり、そう呟いた。
僕はイッタの目を見つめる。
「俺さ、今年は真剣に優勝狙えると思うんだ。足の速い1.2番に鉄壁の守備。打力が弱点だけど4番とエースは全国クラスだ」
おいおい、自分で言うなよ。
僕はそう言い返そうとした口を閉じた。
言っている本人に冗談の感じは全くない。
「今年は行くぞ、全国」
イッタの決意も込められた言葉に、僕の心は正直震えずにはいられなかった。
「僕はついていくよ」
「いや、引っ張れよ」
「僕にはそういうの、合わないだろ」
イッタは少し空を見上げる。
満月と星が僕らを照らしていた。
「確かにそうだな」
それからしばらく言葉は無くなった。
それでも嫌な気はしなかった。
「お前さ、最近日記でコメントしあってるあの子のこと好きなの?」
僕はイッタの唐突な恋愛質問に噴き出してしまう。
「そ、そういうわけではないよ!!楽しいけど」
「そうか」
「イッタの方こそ、彼女とはどうなの?」
僕は意図的に話を変える。
あまりこういうのは得意ではないから。
「俺? 俺は好きだよ」
オドオドしてしまった僕とは違い、隠す様子もなく、サラッと答えられるこいつが羨ましくもあり、少しムカつく。
「初めてかなぁ、こんなに好きになったのは。今までで一番いい女だよ。あいつは」
多分こういうところがこいつがモテる理由なんだろうなとこの時思った。
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