第2章:崩壊の景色

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「良い子は良い子だけど」 あ、またやらかした。 そう思ったが、僕の言葉とほぼ同時に、耳に響く鐘の音が鳴る。 さっきはイッタに助けられたが、今度は本日一番はじめの授業の開始を告げるチャイムに助けられ、迂闊に出してしまった言葉が周りに聞こえることはなかった。 「お前さぁ、ほんと気をつけろよ」 今僕らは屋上にいるのだが、イッタはおばさんから作ってもらったお弁当をガツガツ食べながら、箸で僕の顔を指すようにして言ってくる。 「ごめん……」 行儀の悪いイッタに対しても、僕は謝るしかなかった。 ほんと、僕って馬鹿だ。 自分で地雷を振りまいて、自分で踏み抜いちゃうんだから。 「ていうか、そろそろはっきりしろよ!好きなのか好きじゃないのか!」 イッタはまたしても箸で僕を指してくる。 だから好きじゃないって言ってるじゃないか。と力無く答えると、イッタはイライラするように、右手の指で何度も弁当箱を叩き始めた。 「じゃあお前にとって彼女はどういう存在なわけ?」 「えーと……友達? 理解者? うーん……やっぱり友達かなぁ」 「いーや!違うね。断じて友達ではない!」 「じゃあなんだっていうのさ」 「分からないから聞いてんだよ!」 イッタの強い攻めにいつもなら応戦するのだけど、この話題に関してはただ弱気になるしかできない。 女心も分からなければ、恋愛に関しても分からない。好きな人に対してどんな気持ちを抱くのが普通なのかが全く見当が付かないのだ。 「やっぱり友達?」 「だからそれは違うって」 イッタは強く否定した後、珍しく深いため息を吐く。それは僕の得意技じゃないかと思ったが、言うのはやめた。 「お前はいちいち友達に良いやつなんだけどなぁって声に出して言うのか? 自分が友達だと思ってたらそもそもそんな風に自分に言い聞かせる必要もないし、良いか悪いかなんて関係ないだろ」 だからお前と彼女は友達じゃないんだよ。 イッタはそう締めくくると、立ち上がり、空に向けて叫びだした。 相当モヤモヤさせてしまったらしい。 屋上に来てよかったよ。 教室でこんな様子じゃ、みんなからどう思われるか分からない。
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