第2章:崩壊の景色

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軟式野球大会秋大会一回戦。 空は一面灰色に囲まれ、いつ雨が降り出してもおかしくない空模様。 「みんな、初戦が大事だぞ」 キャプテンの松田は円陣の真ん中に立っている。 やれることはやってきた、こんなところで負けるわけにはいかない。 「イッタ、雨が降り出すとどんな展開になるか分からないからーー」 「分かってるよ、キャプテン。今日は打たして取るピッチングで巻いていくからみんな守備頼むぞ」 「おう!」 「任せろや!」 頼り甲斐のありそうな声があちこちから上がり、イッタはニヤっと笑う。 「攻撃もコールドを狙うぞ。まずは初回からだ。淳、俺に続けよ」 「当たり前だろ」 まさかこんなに期待される時が来るなんて、夏休みに入るまでは考えられなかった。責任を感じるし緊張するが、それがまた楽しい。 「じゃあ行くぞ」 そうして僕にとって初めての大会が幕を開けた。 「やっぱり俺らのチームはつええな」 イッタはアイシングで肩を冷やしながら、ニコニコとピースを向ける。 スコアボードには8-0と記され、その試合は僅か1時間足らずで終わった。 「淳も成長したな。3安打2盗塁はさすがだ」 「完封して、ホームランまで打ったやつに褒められても皮肉にしか思えねぇよ」 「まぁ皮肉だな。俺の次に活躍してたよ」 「このやろ」 「おい、集まれ!」 ふざけ合っていた僕らだったが、松田に呼ばれると走るしかない。 そこにはもうみんな集まっていて、僕らを待っている状況だった。 「今日はこんな形で勝てた。けれど来週の二回戦同じように勝てるとは限らない。今日もイッタと……淳の力が大きかったのはみんな分かっただろう」 僕!? まさかこんな場で僕の名前が挙がるとは思わなかった。なんだか恥ずかしい。 「みんな、どうして淳がこんなに成長したと思う? 実は俺は最近朝早くに学校に来て隠れて素振りをしていたんだ。けれどそんな俺よりも早く、毎日バットを振っている二人がいた」 みんなの視線が一気に僕とイッタに集まる。これにはさすがのイッタも参ったなという顔をした。 「俺は明日も朝練をする。みんなはどうだ?」 松田は周りを見渡す。 こいつは本当にこういうのが上手い。 イッタもキャプテンには向いているが、こういう振りはできないだろう。
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