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「小説? なんだ結局書き始めたのか」
僕は朝練が終わった後、イッタとの連れション中に、小説を書き始めたことを報告した。
「うん。ちょっと書いてみようかなと思って」
「みのりちゃんに言われたの?」
「それは……」
なんでイッタはこんなに鋭いのだろう。
「お、図星か」
「きっかけなんてなんでもいいだろ」
「先輩に言われても始めなかったのに、みのりちゃんに言われれば始める辺りが、淳の可愛いところだな」
僕はニヤニヤと汚い笑みを浮かべながら、ほっぺたをツンツンしてくるイッタの指をとりあえず手で払っておいた。
「イッタも気が向いたら読めよな」
「おう、他にもいろんな奴に紹介しといてやるよ」
「それはもうちょっと慣れてからでお願いします」
僕は自分の小説のページを開いてみる。
そこには『明るい太陽の下で』というタイトルと小説の説明が書いてあり、閲覧数がその上の方で確認できた。
そこには1と書かれている。
さすがに書き始めから多くの人が読みに来てくれるなんて上手い話はないか。
さらにその閲覧数のところを詳しく見ていくと、誰が見に来てくれたかが分かるようになっていた。
そこにはみのりちゃんの名前が書いてある。
みのりちゃんが僕の小説の初めての読者なんだ。そんな風に考えた僕はまた顔に熱いものを感じながら、いやいやと首を振る。
別に初めての読者だからって特別に感じることはないだろ!
一人で動揺している横で、イッタは「あ、これか」っと言って僕の小説のページを開いた。
更新を押すと閲覧数が2になり、イッタの名前が刻まれている。
「お、やっぱりみのりちゃんが初めての読者か」
「どうでもいいだろ」
僕は精一杯自分の感情抑えようと努めながら、授業中に鳴らないようにスマホの音が消えていることを確認してポケットにしまった。
「いや、お前がやっと踏み出すきっかけになった人だぞ。どうでもよくはない。一番に読むべきだ」
イッタもスマホをポケットに入れ、チャックが閉まっていることを確認しながら一人でうんうんと頷いている。
きっかけになった人か。
イッタの言葉に、また恥ずかしがってしまう僕がいた。
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