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僕が小説を書き始めたその週の休日、僕ら野球部は朝練の成果もあり、二回戦、三回戦と無事に勝ち上がり、ベスト8に駒を進めた。
さらにその次の週の、準々決勝、準決勝もイッタの好投と堅い守備、そして機動力を生かした野球で僕らは勝ち上がる。
そうして気が付いた頃には、僕らの中学校の野球部では史上初となる決勝戦を控えるのみとなっていた。
[淳くんまた勝ったんだ! 凄いね! 小説もやっぱり面白いし。もうすぐ最終話かな?]
[うん、ありがとう。そうだね、もう次が最終話。今回は短編だったけど次は長編に挑戦してみるよ]
[その時はまた、イラストは私に任せてね]
僕はみのりちゃんとのコメントを見返しながら、ご飯を食べている。
「淳、食事中はスマホしまいなさい」
「てかお兄ちゃんなにニヤついてんの? キモいんだけど」
妹と母親に少し引かれていることにやっと気付いた僕は、急いでご飯を口に入れ、逃げるように自分の部屋に籠った。
まさか自分がご飯を食べながらニヤついてたなんて。学校では絶対にないように気を付けないと。
僕は自分の頬を2、3度引っ張った後、ベットにごろんと寝転がり、自分が書いた短編小説を読み直す。
主人公は野球部に入っている中学生。
この主人公は決勝戦を一週間後に控えた捕手なのだけれど、ひょんなことからチームのエース投手である親友と喧嘩をしてしまうのだ。
その二人は仲直りしそうでできないまま試合に挑み、ギクシャクしたままうまくピンチを乗り越えて、最後の回に入る。
そして運命の最終回、ツーアウトランナー満塁の場面。点差が2点の場面で監督の指示もあり、四番バッターを敬遠しようとする投手に自信を持って投げてこいと捕手が怒るのだ。
そして投手が投げた最後の球はーー
「よし」
僕は最終話を書き終え、ふぅっと一息ついた。はじめは最後まで書ききることができるのかという不安があったが、書き始めるととても楽しく、短編だったのもあり二週間程度で書くことができた。
僕は自分が思っている以上に文章を書くのが好きだったらしい。
それにしても一つの小説を書き終えることでこんなに達成感を得られるとは。
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