第3章:依存

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カタカタとパソコンのキーボードが立てる音が部屋の中に響いている。 他にはなにも聞こえない。 テレビも部屋にないし、僕以外に誰もいない? 深夜2時。すっかり夜型の生活である。 電気は節約の為に豆電球のみ。 薄暗い部屋をわずかに照らしてくれる電球色が僕は好きだった。 あぁ、明日はそろそろ学校に行かないと、また先生から説教の電話が掛かってくるだろう。あんな行く意味な感じない場所に、なぜ毎日眠たい目を擦りながら向かわなければ行かないのか。 学校の存在そのものに頭を悩ませながら、書いていた文章をキリのいいところまで終わらせた時、パソコン上にメールが入ったことを知らせるマークが付いた。 [みのり 淳くん、まさかまだ起きてたりしないよね? 早く寝ないとダメだよ。身体壊すよ! みんなに心配かけちゃダメ!] そんな風に心配してくれるのは君だけだよ、みのり。 [大丈夫だよ。 昼間にいっぱい寝たから。心配してくれてありがとう] 送信ボタンを押して、僕はパソコンを閉じる。そして布団に入り、目を閉じた。 するとあの日の景色が目の奥にフッと浮かんでくる。 またきたか。駄目だ今日は眠れない日だ。 定期的に眠る前に、おさらいかのように頭に流れるその時の景色と、その後のこと。 こうなればもう向き合うしかない。 火の中に飛び込む、唯一の親友。 止められない僕。助けにいけない僕。 崩れる家。歪む景色。 見つけ出されたイッタの死体。 その側に立つ、僕がおばさんと呼んで優しくしてもらっていたイッタのお母さん。 おばさんは咽び泣いている。叫んでいる。 そしておばさんに責められる僕。 「淳くん、なんで止めてくれなかったの。なんで助けてやらなかったのーー なんで貴方だけ生きてるの!」 いつもイッタの家に行くと見せてくれたおばさんの優しい目に、悲しみと憎悪が入り混じっている。 あぁ本当にどうして僕だけが生きているのか。 次に浮かんだのは一週間休んで学校に行った時の友達の声と表情と態度。 僕を見た瞬間、静まる教室。 始まるこそこそ話。 誰も近くには来ない。みんな離れたところから僕を見ている。
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