第3章:依存

5/25

19人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
「おいおい、何をあっさりと逃げようとしてるんだ」 いや、逃げる逃げないの前に、遅刻しそうなので。あんたいつも絶対に遅刻は良くないぞ、って言ってるじゃないか。 そう言い返そうとした時に、もう聞き飽きたチャイムのベルが響き渡る。 さっきまで校門にいた学生達も走り出し、各々一時間目の授業の行われる教室に向かう。 「ああ! ヤバい! もうこんな時間だったのか! じゃあな」 横山も僕の腕を離すと、その学生達に紛れて走り出した。 いや、あんたのせいで僕まで巻き込まれて遅刻なんだが。 一体今の時間はなんだったんだ? 僕は周りがバタバタとしている中をゆっくりと歩く。 遅刻だと言われたら横山の所為にしよう。 実際あいつが100%悪いからな。 そんなことを考えながら僕は教室の扉を控え目に開ける。 遅刻してきたにも関わらず、クラスメイトは誰も僕に目を向けない。 出席を取ってる最中の先生も怒るわけでもなく、僕を見て、無言でノートに記し、また呼び始めた。 横山、誰からも相手にされてない僕で良かったな。僕以外ならやれ遅刻だとみんなが騒ぎ、先生も多少注意をする。そして横山のせいにされていたところだぞ。 僕は自分の席に腰掛け、授業で使う教科書とノート、筆記用具を取り出した。 そして顔を上げた時、隣の席に座る女子と目が合う。 なんだ? 遠くから見られることには慣れているが、こんな近くでまじまじと見られることには慣れていない僕は、少し驚いた。 彼女は図書委員副会長の秋本楓(あきもとかえで)。もちろん今まで会話したことはない。彼女自体は図書委員の割に明るい性格のようだが。 まぁいい。たまたま目が合っただけだろう。気にするのは止めよう。 僕は秋本から目を逸らし、こっそりと鞄のポケットからスマホを取り出す。 少々騒がしい朝を乗り越えた僕は、ふぅと一息ついて、母さんにメールを返そうと机の中でスマホを触った。 こういうのも他の奴がやると怒られたりすることもあるかもしれないが、僕の場合は無い。 先生も気付いているだろうが、触らぬ神に祟りなしといった感じで流すのだ。 まぁ横山だけは例外だけど。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加