第3章:依存

7/25

19人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
[大した授業じゃなくても板書ぐらいしなきゃいけないよ] [いいの。 分からなかったら淳くんに聞くから] [良くないよ、それ笑] [だって先生よりも、淳くんにメールで教えてもらう方が分かりやすいんだもん] 板書とスマホを交互にこなしながら、テンポ良くメールを返していく。 次のメールで今度電話で教えてあげようか? っと送りそうになったが止めた。 駄目だ。これは多分出過ぎてる。 みのりに嫌われたり、関係を壊したりしたくない。というのも一年ぐらい前、みのりに軽い気持ちで会わないか?と聞いた時、かなり強めに否定され、そういうのはないからときっぱり断言された。 正直そこまで強く言われるのはショックだったが、それでもみのりしかない僕は受け止めるしかない。 声を聞いてみたい。会ってみたい。そんな気持ちはもちろんあるのだが、みのりが嫌というなら仕方ないのだ。 僕はそれでも我慢できる。 唯一の友達?になるのだろうか理解者?になるのだろうか。そんなみのりが大切だから。 あれ? なんか昔にもこんなこと考えていたような。 僕の目にぼんやりと三年前、中学二年生の時の屋上での会話が蘇る。 あぁ、そうか。イッタとの会話か…… 「えーと……友達? 理解者? うーん……やっぱり友達かなぁ」 「いーや!違うね。断じて友達ではない!」 あの時、イッタは友達であるというのを否定した。はっきりとは憶えていないが、理由もしっかりしていたように思う。というよりもイッタは基本的に論理的であり、間違えたことは言わなかった。 けれどあの時は珍しくイッタの酷い言い方にムカついてしまったんだっけ。 この時のことをこんなにはっきり憶えているのは、多分イッタに対して本気でムカついたことが滅多になかったからだろう。 「悪い。だけど今思ったよ。やっぱり淳、お前さ」 「まぁ今はいいか」 次に思い浮かんだのはイッタの不気味だが優しい笑みと、困ったような表情。 イッタ、お前はあの時僕に何を伝えようとしてくれてたんだ? どうして言おうとした言葉を飲み込んだんだ? 分からない。あの時の僕にも分からなかったが、今の僕にも分からない。 僕の目からは涙が溢れそうになる。 イッタ、僕は何も変わってないよ。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加