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いったいどうして急に僕なんかを見てくるようになったんだ? 僕にハンカチを渡そうと思ったんだ?
僕が秋本に何かしたか?
当然全く身に覚えはない。
「もう私はあんたが感情豊かなこと知ってるから」
彼女の言葉から理由を求めようとすると、もっと分からなくなる。
僕は秋本に感情を見せたことはない。
さらにさっき彼女は昨日まで知らなかったとも言っていた。
そもそも僕が感情を表現するのはみのりに対するメールと小説を書く時だけだ。
感情が豊かだというのも……みのりにしか言われたことがない。
[淳くんは感情豊かだよね。淳くんとメールをしたり淳くんの書いた小説を読むと、私の心も豊かになっていくような気がするの]
僕はみのりから送られてきた言葉を思い出す。僕はたしかその時、[僕が感情豊かだなんて言うのはみのりだけだよ]と送ったと思う。
もしかして秋本楓が……
「それは無いよなぁ」
僕は目を抑えながら、自分の頭に浮かんだ考えを否定するように呟いた。
とりあえず秋本に聞かなければ何も分からない。
涙を拭き終え、冷静さを取り戻した僕は顔を上げる。
「お前さ、涙を流しながらピンクのハンカチ握って何してんの?」
そこにはクラスメイトは一人もおらず、さっき秋本がいた場所から横山が僕の顔を覗いていた。
あ、そうか。
次の授業、体育か。
僕は横山の顔を無言で払い、体操服を持って立ち上がる。
横山は必死に何かを伝えようとしていたが、全て無視して教室を出た。
二時間目体育
三時間目四時間目が選択制の芸術の授業。
「なんで今日に限ってーー」
僕は溜息をつく。今日に限って普通の授業が全然出てこない。
そのせいで秋本と話す時間も無い。
さらに昼休みに話を聞こうとしていたら、体育館で集会があるときた。
ほんと僕は全く付いてないな。
みのりにメールを送りながら僕はダラダラと体育館に向かう。
周りには誰もいない。
実は集会はもうとっくの前に始まっていたらしい。
友達のいない僕には集会があるという情報が回っておらず、何故か人のいない食堂で食事をして、教室に戻り黒板を見て、ようやく気付いたのだ。
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