第3章:依存

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あぁ、また冷たい視線をいっぱい集めてしまう。何も感情の無い無機質な視線。 校長先生すら、あーあいつかぁといった感じで直ぐに目を逸らす。 もちろん後から注意してくる先生もいない。 友達のいない僕にとって、一人だけ集会の情報が回っていないことは割と良くあることであり、常習犯となってしまっているのだ。 ここから入るのが一番目立たないかな。 僕は体育館の横の扉をそっと開けて覗いてみる。 中ではおそらく三年生であろう女性が前に立っている。 そして先生勢が横に並んで座り、校長先生が一番先頭に座っている。 さらに全く誰も喋らない静かな雰囲気の中、ただ真っ直ぐ座り続けている学生達の間を縫うように、横山が必死に誰かを探している。 そこまで確認できた僕は、一旦扉を閉めた。 なんだか嫌な予感がする。 横山が探しているとなると、いなければいけない自分のクラスの生徒がいないということになる。 横山のクラスの生徒の中でまだ体育館にいない人間となると、おそらく情報の回っていなかった僕しかいない。 横山がどんな理由で僕を探しているのかは分からないが、こんな中で僕が出て行けば悪目立ちは免れないだろう。 うん、逃げるか。 今逃げれば後で横山にうだうだ言われるだけで済む。 僕は体育館に背を向けて、今来た道を引き返そうとした。 「あ、いた」 しかしそこには秋本が立っていてーー 「ちょっとトイレ行きます」 あれだけさっき話をしたがっていた秋本から逃げようとした僕だったのだが、直ぐにシャツの首の部分を掴まれた。 「ほら行くよー」 え、ええ。 行くの? このよくわからない雰囲気の体育館の中に? 公開処刑か何かか? イジメに近いぞ。 抵抗する余裕もなく、頭の中の拒否を口にする時間も無い間に扉は開かれて、体育館に引きずり込まれる。 「会長、見つけたので連れてきました」 「おーし、楓。よくやった。連れて来い」 「淳! どこに行ってたんだ! 体育の前に後で集会あるから体育館に来いと言ってただろ!」 なんだ? なんなんだこれは。 前に立っているのは脱力系で有名な図書委員会会長のようだ。
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