第3章:依存

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そしてその会長のいる場所に、副会長である秋本は僕を無理矢理引っ張って連れて行こうとしている。 いったいなんでこんな目に。 今まで静かな学校生活を送ってきた。 誰にも干渉されず、誰にも干渉せず。 それが今日、このグイグイと引っ張っている秋本楓によって壊されようとしている。 やめてくれ。 僕は目立ちたくないんだ。 人と近付きたくないんだ。見られたくないんだよ またあの時のような苦しい思いは…… 当然秋本にそんな口に出ていない気持ちが伝わるわけはない。 早く早くと急かしてきている。 おそらく今の僕は、ただの駄々っ子にしか見えていないだろう。 そうして遂に僕は舞台上に上がる階段に差し掛かった。 「あ、」 その時ズボンのポケットから、ピンクの花柄のハンカチがはらりと落ちる。 その瞬間ずっと逃げようとしていた僕の身体は抵抗を止めた。 「秋本、ハンカチが」 「ん? そんなの後で拾うから」 気付けば僕はもう舞台の真ん中、図書委員会会長の目の前まで連れてこられていた。 体育館にいる全生徒の目が僕に集まる。 仕事を果たした秋本は、ハンカチを拾い、横に用意された椅子に腰掛ける。 僕はそんな状況の中で、なぜか秋本の手元に戻ったハンカチから目が離せなくなっていた。 なぜさっき僕は涙を我慢できなかったのだろう。 秋本に話しかけられて、少し嬉しいだなんて思ったんだろう。 イッタが死んでから四年間、人と関わらない生活を送ってきた。 それでも僕にはみのりがいた。 みのりさえいればいいと思っていた。 けれど違ったのか? 僕は心のどこかで、前のように友達を求めていたのか? ズキンッ 頭に電流が流れた。 イッタが振り返る。 火に飛び込む。 大事な友達が死んで 他の友達も離れていく。 「……斎藤淳殿。あなたの作品を……図書委員会会長……」 耳に入ってくる声が遠のき、 人の目が刺さり、 頭の中のざわつきが一層酷くなりーー なんで貴方だけ生きてるの!? なんで僕は生きてる? なんで。 どうして。 友達 ほしい いらない ほしい いらない みのりさえいれば みのりだけでは いや、僕にはみのりしか でも…… 「うわああああぁあぁああ!!!ぎゃああああああああうぅ!!」 ーー僕は壊れ、四年振りに意識を失った。
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