第3章:依存

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ん? ここはどこだろうーー 背中には柔らかい感触があり、身体の上にも布団がかけられている。 その温かさを感じながら僕は目を開けた。 灰色の天井に、横にはカーテンで区切られている。 そんな少し薄暗い雰囲気が、僕のどんよりした気持ちにさらに拍車をかけてきた。 あぁ、久しぶりにやってしまった。 最近人付き合いを断つことで落ち着いていたのに。 また悪目立ちしてしまった。 これで高校生活も終わったようなものだ。 いや、元から終わってたのか。 僕はポケットからスマホを取り出して、履歴を見る。 みのりからのメールが2通。 一つ目は普通のメール。 二つ目はいつもと違い返信の遅い僕を、心配してくれている内容のメールだった。 [ごめん、少し熱が出て保健室で寝てたよ] さすがに体育館に引きずり込まれて、気が狂って発狂して倒れたなんて言えないよな。 もっとみのりに心配させてしまう。 メール送信中の画面を見ながら、時間に目をやると、もう16時を過ぎていた。 授業も全て終わっている時間だ。 とりあえず家に帰るか。 僕はベッドから起き上がり、布団を折り畳む。ずっと寝ていたからか頭がくらくらしていた。 その頭の違和感が収まるのを待ち、カーテンを開ける。 するとそこには、椅子に腰掛ける秋本の姿があった。 秋本は膝の上に紙の束を置き、気持ちよさそうにスヤスヤと眠っている。 周りを見渡してみたが他に人はいない。 保健室の先生も外に出ているみたいだ。 僕は秋本の膝の上の紙を一枚つまんで読んでみた。 そこには見覚えのあるタイトルと、最優秀作品の判子、そして僕の名前がある。 あぁ、これのせいで僕は衆目の前に晒されることになったのか。 それは確かに僕が書いた短編小説であり、 本校初の小説大賞を開催! の文字につられて、なんとなく投稿してみた作品だった。 多分投稿作品数もそんなになく、出ている作品も 初めて書いてみました! みたいな内容が多かったんだろうなぁ。 僕は自分が最優秀作品に選ばれた理由を冷静に分析しながら溜息を吐く。 まさかあんな大掛かりな表彰式があったなんて、知っていたら絶対に出さなかった。
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