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それから一週間が経ち、野球部の先輩達にとっての最後の大会をいよいよ明日に控えた練習終わり。
「おい、ミルキーしようぜ!」
ミルキーは完全に野球部で流行していた。
「いいぜ、いいぜ」
「なにする?」
「やっぱり野球ゲームだろ?」
はしゃぐ先輩達を見て、俺はイッタに耳打ちする。
「おい、エースよ。流行らせるタイミング間違えたんじゃないか?」
「あぁ、かもしれないな」
イッタと俺は大事な試合を明日に控えてのこの様子を見ながらも、苦笑いをするしかない。
イッタはあの後、まずは同じ学年の野球部の連中と休み時間などに、ミルキーをし始め、流行らせた。そしてそこからはトントン拍子で広まり始め、まずは後輩に広がったのだが。
「まさか先輩が始めるとはな」
三日前、練習終わりに集まって遊んでいるところをたまたまキャプテンに見られ、怒られると思ったイッタらはすぐに謝った。
しかしなんと、キャプテンはその場で自分も登録してやり始めたらしい。
そして今、先輩達はみんなミルキーで遊んでいる。
まったく、なんでこんなものにみんなハマっちゃうんだよ。
まだアプリをダウンロードすらしてない僕はその様子を一歩引いて見ていた。
「あのー先輩。明日試合ですけど帰らなくても大丈夫ですかね?」
さすがに日も暮れてきて夜御飯の時間になってきたということもあり、僕はキャプテンに尋ねる。
するとキャプテンはゲームから目を離さずに、しかししっかりとした口調で答えた。
「もうちょっとだけ。もうちょっとだけみんなでこうしていたいんだ」
楽しいんだよ。
キャプテンはそう続ける。
引退を控えて、僕達のチームは全国制覇できるようなチームでも、全国に行けるようなレベルのチームでも正直ない。
「楽しいなぁ。もうすぐこうやって部活の後に遊ぶのが無くなると思うと寂しくなるよ」
キャプテンがそう言うと、先輩達の手は止まる。そして突然みんなでワンワンと泣き始めた。
そうか。先輩達は、みんなといる残り少ない時間を楽しむためにミルキーを……
僕は先輩達の様子を見てもらい泣きする。
やがて僕は泣きながらスマホを持ち、ミルキーのダウンロード画面を開いた。
キャプテン、そして先輩達の熱い想いを見ると、なんだか一歩引いて見ていた自分が逆に恥ずかしくなってきたのだ。
試合には出られないけど、僕もこの輪の中に入りたい……!
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