第1章 ―春―

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―――――――… どのくらいの時間がたったのだろうか。 さっきまで歌っていた女子生徒がこちらを向いた。 あまりに急なことだったので、俺はそのまま立っているしかなかった。 …というよりは驚いてかたまってしまったのだ。 驚いたのは俺だけではなかったらしく、彼女も驚いて目を大きく開いていた。 …なんか口をパクパクさせているな。金魚みたいだ。 その姿に思わず吹き出しそうになったがこらえた。 声をかけようとしたら 「どうしたの?大丈夫!?」 と聞かれた。 え? 何が大丈夫?なのだろう…? 「…?え…?な、何が?」 「え、あの泣いてるから…。 どうしたのかなって思って。」 ゑ? …………泣いてる?俺が? びっくりして目元を触ってみた。そしたら濡れている。 「ほんとだ…。気づかなかった。ずっとあんたの歌を聴いてて… いい歌だなって思ったら泣いたみたいだな…」 俺は目を服の袖でこすった。 彼女はキョトンとしてこちらを見て…
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