悪夢の始まり

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「ぐっ……!」 鼠の短い声が漏れた。声からして男のようだ。 目が暗闇に慣れてきて、チラリと声がした方を向いた。 僅かに鼠の姿が分かる。 白く長いマントを着用し、フードも被っていたのだろうが、投げ飛ばされた影響で頭が見えていた。 掴んでいたであろう白い布も、手から離れ転がっている。 痛みが強いのか。倒れたまま動かず、小さい声で唸っていた。 受け身も取れなかったのだろう。それに俺も、一切の手加減はなかった。 鼠である男を、上から一瞥する。 そしてそっとしゃがみ込み、仰向けに転がす。 ごろりと頭が動くと、見えた顔には狐のお面が付けられていた。 睨み付けるように見下ろし、力づくでお面を外す。 まだ痛みで目を細める、男の顔が露(あらわ)になった。 暗闇に目が慣れたと言えど、真っ暗な中で見る男の顔。 それでもこの男に見覚えはなかった。
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