637人が本棚に入れています
本棚に追加
「ぐっ……!」
鼠の短い声が漏れた。声からして男のようだ。
目が暗闇に慣れてきて、チラリと声がした方を向いた。
僅かに鼠の姿が分かる。
白く長いマントを着用し、フードも被っていたのだろうが、投げ飛ばされた影響で頭が見えていた。
掴んでいたであろう白い布も、手から離れ転がっている。
痛みが強いのか。倒れたまま動かず、小さい声で唸っていた。
受け身も取れなかったのだろう。それに俺も、一切の手加減はなかった。
鼠である男を、上から一瞥する。
そしてそっとしゃがみ込み、仰向けに転がす。
ごろりと頭が動くと、見えた顔には狐のお面が付けられていた。
睨み付けるように見下ろし、力づくでお面を外す。
まだ痛みで目を細める、男の顔が露(あらわ)になった。
暗闇に目が慣れたと言えど、真っ暗な中で見る男の顔。
それでもこの男に見覚えはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!