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パチッと目が開いた。
すぐ目の前に薄汚れた灰色が見える。
それと同時に、冷たさが頬から伝わってきた。
体を動かそうとすると、両腕が動かない。
ぬめりとした液体が、頬に流ている感触がある。
拘束されて、床の上に転がされていたよう。
……あの大男に殴られ、意識を失ってしまったのか。
──くそっ!
完全に油断した。
体を捻りながら、上体を起こす。
狭い部屋の中にいて、ここが牢獄だと分かった。
目の前には黒鉄(くろがね)の棒が並んでいる。
動かない両腕は後ろに回されていて、上下に動かしてみる。
金属の感じはない。
どうやらただの紐で結ばれているようだ。
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