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──それならまだ好都合。
何とかなる。
縄抜けの方法なら幾つか知っていた。
──しかも本当に相手の手の動きを封じたいなら、親指同士を結ぶものだ。
だから俺を攫った相手は、素人──アマチュアだ。
はらりと紐が緩んだ感覚がした。手の自由が利く。
そこで頬に触れてみる。
ぬめりとしていた感触は、やはり頭から流れていた血だった。
指を見てみると、僅かながらに血液が付着している。
攫われてから、まだそこまで時間は経っていないようだ。
立ち上がり、首の骨をこきりと鳴らす。
殴られた頭にはまだ痛みがあるものの、他に痛みはない。
手足も動く。
では後は、どうやってここから出るか─?
自分の体の状態を把握したところで、もう一度よく部屋の中を見渡した。
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