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───人!?
俺以外にも誰かいるのか?
「助けてくれ!頼む!殺さないでくれっ!まだ死にたくないぃぃーー!!」
それは男の叫び声。生を強く懇願する悲鳴だ。
慌てて扉を閉め、開いていないように見せ掛ける。
男の悲鳴とずるずると、重い物を引きずる音がする。
やがて声は遠ざかっていき、何も聞こえなくなった。
しばらくその場で様子を伺った後、ゆっくりと扉を開ける。
牢獄から出て、廊下に立つ。
牢獄の中の床のように、汚れた色の廊下が真っ直ぐ伸びていた。
一番奥で廊下は右に折れ、どうやらその先も続いているようだ。
天井は低い。
俺が廊下に立つと、天井までの高さはそれ程ない。
ジャンプすれば手が届くだろう。
伸びゆく廊下の先には、黒い、何かを引きずった跡が見えた。
それが廊下の途中から現れ、奥で直角に曲がり消えていた。
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