637人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーー
幾つもある、飾られているひとつの絵画──。
そこに描かれているのは、ただ正面を見据える、凛々しい表情の女。
ぱちりと二重に描かれた両目。
その目が "ぎょろり" と動く。
動いた黒目は、草壁薫の背中を視界に捉えた。
ーーーー
俺は茶色の扉の前までやって来た。
ドアノブも豪華な飾り模様が彫られていたが、鉄製の扉のように、向こう側を見渡せるガラスなどはなかった。
そっと手を伸ばす。
血で染まった手が、ノブを掴もうとした瞬間だった。
────トストストス。
それは聞こえるかどうかの、微かな音。
俺の耳には聞こえなかったが、その代わり "痛み" で気付いた。
突然背中に感じた痛み。
まるで針が刺さったように、チクリとした。
驚き慌て、顔を背中に向ける。
背中に、3本のダーツのような矢が刺さっていた。
最初のコメントを投稿しよう!