地下牢の遊戯

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ーーーー 幾つもある、飾られているひとつの絵画──。 そこに描かれているのは、ただ正面を見据える、凛々しい表情の女。 ぱちりと二重に描かれた両目。 その目が "ぎょろり" と動く。 動いた黒目は、草壁薫の背中を視界に捉えた。 ーーーー 俺は茶色の扉の前までやって来た。 ドアノブも豪華な飾り模様が彫られていたが、鉄製の扉のように、向こう側を見渡せるガラスなどはなかった。 そっと手を伸ばす。 血で染まった手が、ノブを掴もうとした瞬間だった。 ────トストストス。 それは聞こえるかどうかの、微かな音。 俺の耳には聞こえなかったが、その代わり "痛み" で気付いた。 突然背中に感じた痛み。 まるで針が刺さったように、チクリとした。 驚き慌て、顔を背中に向ける。 背中に、3本のダーツのような矢が刺さっていた。
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