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四月二十一日、日曜日。
桜もほぼ散り切って、暖かな風が肌に触れるようになってきた今日この頃。
東京都内、とある住宅街の一角に小さなアパートがある。
二階建てであり、築年数は相当なのだろう、朱色のトタン屋根はところどころ錆が浮き出ている。
加えて近隣の新鋭住宅とのコントラストもあってか、一括して見る者に古臭くちんけな印象を与え、独特なオーラを放つ建物。
そのアパートの名は「眞岡荘」。
一人暮らしをしている高校二年生の俺はそんなオンボロアパート二階の最奥部、二〇四号室に住んでいる。
外見に類するほどに傷みが激しく、広さも六畳ほどの一室だ。
ぽかぽかとした陽射しが窓際に降り注ぎ、既に時計の短針は11の文字を指そうという頃合いにも関わらず、俺は布団の温もりの中でもごもごと縮こまる。
睡眠欲には勝てない。まだ寝ていたい。
貴重な日曜日の浪費は勿体ないと思いつつも、なかなかこの楽園から出られない。
あと少しだけ。もうちょっと。
そうして枕元の時計だけがカチカチと部屋に音を刻ませていた、そんな時だ。
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