第1章

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「相変わらず威勢だけは良いな、千世(ちよ)。」 「! 幼名で呼ぶんじゃねぇ!俺は鷹司(たかつかさ)影虎(かげとら)だって言ってんだろ!」 影虎と名乗った男は刀をブンブン振って怒鳴る。 和泉守は「五月蝿(うるさ)い」とでも言いたげに顔をしかめた。 「・・・ふん、余裕かましていられるのも今のうちだぜ、今日こそは決着をつけてやる。」 平静さを取り戻したのか、影虎は刀を構え直す。 「―それこそ、こちらの科白だ。長年に亘る確執もここまで。 この安住(あずみ)の地は、我ら和泉守がいただく。」 現在対峙している草原を含む周囲の土地、安住を巡って、長いこと和泉守と鷹司は戦闘を繰り返してきた。 獲っては獲られ、殺っては殺られる、その繰り返し。領内にも疲弊の色が見えてきて、ここらで決着をつけたいのは両陣に一致した見解だ。 「―・・・では・・・いざ」 「参る!」 薙刀と刀が降り下ろされ、ガキン!と重い音が鳴り響く。 その音を合図に、後ろに控えていた騎馬も鬨(とき)の声を上げ、一斉に戦闘が始まった。
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