第3章

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それから数か月後、朝から屋敷の中はバタついていた。 使用人たちにアドニスの魔力判定の時のような浮わつきはなく、むしろ深刻そうな顔つきだ。 「どうしたんでしゅか?」 着替えを手伝ってもらいながら、シオーネに問いかける。 「―闇の貴族さまに、ご不幸があったのです。」 「・・・どなたか、おなくなりになったのでしゅか。」 「え、ええ・・・。奥方さまですわ。もともと、お身体の弱い方だとお聞きしております。」 「ご不幸」という単語から誰かの死を連想したサラに驚きながらも、シオーネはサラに服を宛(あて)がう。 「準備しておいてようございましたわ。」 珊瑚(さんご)色のワンピースは初めて見るものだ。 上に羽織る茜色のジャケットには、胸のところにフラム家の家紋が刺繍されている。 (これが礼服ってことか。) 和国では礼服と言えば黒の紋付き袴だったが、随分明るい色合いだ。
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